今、手元に実績を記録した在庫データと入荷データがあるのに、Tera計算で在庫データと入荷データを算出するのは意味がないという意見がある。
しかし、著者は在庫データと入荷データをそのまま使用してはいけないと考える。

Tera計算の理念「出荷するための在庫であり、在庫を確保するための入荷である」と言う考えから、実績(在庫データ・入庫データ)は、出荷データから見たとき適正なのかと言う疑問が残る。
出荷データ算出(在庫量・入荷量)と実績データ(在庫量・入荷量)の差異検証は物流システム設計や改善に新しい視点を与えることになると考えている。

Tera
計算は出荷データから在庫量と入庫量を算出している。

著者はデータ提供者に対して、「在庫データと入荷データが出荷データに対して、物量がどの位置付けに有るか」を説明し、データ提供者と共通の認識のもとに入荷量・在庫量を算出しなければならないと考えている。
この仕事を怠ると、今までに潜在する問題を見逃し、時には間違った設定でシステムを設計することになる。


在庫量の推定画面


第2項 在庫量推定

出荷データから在庫量を計算する方法は前項で述べた。
計算例として、出荷データ2022/05/09から在庫量(PL換算)計算する手順を説明する。
1.アイテムランク別に2022/05/09の出荷物量算出(連番1-5)。
2.最大在庫数(日)及び安全在庫(日)で指定し(連番7-8)、安定運用時在庫(日)を計算、計算式は安定運用時在庫=(最大在庫()―安全在庫())/2+安全在庫()である(連番9)。
3.安定運用時在庫数量を計算、計算式は出荷量*安定運用時在庫(日)。
4.安定運用時在庫*出荷量で計算(連番10-14 )。連番16-18は安定運用時在庫/アイテム数で算出。
5.この表計算のポイントは、パレット積付方法の計算。 単載積付はパレットに1アイテム積載、2混載積付はパレットに2 アイテムを積載で、混載積付は先頭数字がパレットに積載するアイテム数を示している。
単載積付と混載積付を区分する方法は、アイテム当たり在庫(PL換算)が0.5PL以上で有れば単載積付で、0.5PL~0.332混載積載、0.32~0.253混載積載0.24-0.1254混載積載で、0.125以下は8混載積載として計算している。
混載積載のPL換算はアイテム数/PL積載アイテム数で算出する。

Tera計算では、バラ出荷のBI_Dランクの出荷アイテム数に出荷していないアイテム数を加算している。 また、保管スペース計算時は上記計算の1.1倍(Tera設定)物量として計算している。

注:
この計算は出荷データのPL換算を単純集計した数値。
PL当たりの積載数を考慮必要がある。


第1項 在庫の平均と安定時運用在庫の違い



左図はtera計算2の在庫量推定画面のフローである。

在庫とは、出荷のために事前に入荷し保管保管している商品、在庫量はその物量。
在庫量は在庫日数と言う単位でも表現できる、在庫日数は出荷量の何日分に相当する物量と意味。 Tera計算では在庫(日)で記されたものは在庫日数のこと。
最大在庫は在庫の上限値、これ以上の在庫はしない。
 
安全在庫は 在庫量の下限値で常に確保している在庫、入荷品の遅れや予想以上の出荷が有った時はこの安全在庫から出荷する。
最大在庫から安全在庫を引いた在庫が変動する在庫で、日々の在庫の変動はこの範囲で上下する。
注文点は仕入発注してから入荷されるまでの期間を逆算して設定された発注日の在庫で、この注文点の在庫を最小在庫と言う。 仕入担当者は在庫が減じて最小在庫になると仕入発注する。
最大在庫日数を守り保管規模を小さくするためには、各アイテムの入荷日を分散(変動する在庫6日分180アイテムあれば一日30 アイテム入荷)する。安定運用時在庫=変動する在庫/2+安全在庫の管理をすることで、配送センター全体の在庫量を最小かつ一定に保つことが出来る。 Tera計算ではこの管理された在庫を安定運用時在庫と呼ぶ。

計算例で説明する。下記の図で出荷数10/日とすれば、「最大在庫=出荷数*最大在庫期間=10*8=80個」
「在庫の平均=最大在庫/2=40個」、「安全在庫=出荷数*安全在庫期間=10 *2=20個、入荷期間が2日であれば、「最小在庫=安全在庫+(出荷量*入荷期間)=20+(10*2)=40個」となる。

Tera計算の在庫計算は在庫の平均ではなく、下記の安定運用時在庫の計算を行っている。
「変動する在庫=出荷数*(最大在庫期間-安全在庫期間)=10*(8-2)=60個」
「安定運用時在庫=(変動する在庫/2)+安全在庫=30+20=50個」

 
上記の計算で考えると、最小在庫時に仕入発注を繰り返すと最大在庫=最小在庫となり、出荷の3日前から、1日分の仕入発注を毎日繰り返すと「安全在庫+出荷数*1日」が最大在庫となる。 賞味期間の短い牛乳の配送センターのように、安全在庫もなく当日入荷の当日出荷を行っている配送センターもある。
しかし大半の配送センターは、最小在庫の2倍以上の在庫(最大在庫)を持っている。
仕入数により仕入単価が違う事や商品確保、メーカであれば製造ロットの確保等、全社的メリットを顧慮して最大在庫が設定されている。

Tera計算は、配送センター側の都合だけで出荷量が担保できる在庫量を設定すると現状と合わない少ない在庫設定となるので、最大在庫と安産在庫を任意に変更できるよう工夫している。

注:安定運用時在庫はTera 計算説明のために使用した用語で在庫用語ではない。また、在庫の平均も在庫用語の平均在庫と意味が違う。在庫用語の平均在庫は他の書籍で確認頂きたい。

第3節 在庫量の推定

第4章 Tera計算2_配送センター規模計算